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テネメント・ミュージアムで考える移民史

ローアーイーストサイドのお散歩はまだ続きます。
今日のメインはテネメント・ミュージアムです。
ここはTenementとは「すみか」という意味で、ここはかつてニューヨークに移民してきた人たちが肩を寄せ合って生活していた住居であり、現在は当時の状況をそのまま残し、移民たちの生活を現在に伝えるための博物館になっています。1988年に開館していますので、新しい博物館です。
アメリカは知る人ぞ知る移民たちが作り上げた国ですので、移民の歴史を知ることはアメリカ人にとっては自分たちのルーツを知ることになります。館内はアメリカ人で結構混んでいます。

博物館入口
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この博物館の見学は個人では不可で、決められた時間に始まるの6種類のツアーからお好みの物を選んで、ツアーに参加して説明員の人たちと一緒に見学することになっています。ミュージアムショップのレジで各ツアーの時間を確認してチケットを購入します。($22/ツアー)
私はアイルランド移民について説明してもらうツアーに参加しました。

この建物は1863年に建てられ、1935年に最後の住人が退去するまで20カ国から集まってきた約7000人の移民たちが暮らしてきました。1863年にドイツから来た最初の住人がここに家を建てた当時は飲食店が地下にあり、その上に22家族が住む部屋があったそうです。そしてニューヨークの建築法が整うにつれて、水道やガスが通るようになり、部屋も増築が可能となり、現在の姿になりました。
テネメント・ミュージアムで考える移民史_d0235123_1216668.jpgこちらは1863年当時の様子です。

そして私が本日参加したアイルランド系移民についてですが、現在アメリカ人の12%がアイルランド系だと自認しているそうです。随分多いですね。
彼らは19世紀末にアイルランドで起こった大飢饉のきっかけに新天地を求めま、病気が蔓延して劣悪な環境の船に乗って、命がけでアメリカ大陸に到着しました。半数がカナダに行き、残りはエリス島を通って、アメリカ大陸に上陸しました。



これは別の日に来訪した際の写真ですが、アメリカ移民の通過点であったニューヨークにあるエリス島移民局です。
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アイルランド系移民にとって、アメリカに移民しても状況はすぐに好転するわけでもなく、6畳に家族が5人住まなければいけないような住環境で、職業もなかったそうです。
テナメント博物館内部
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そしてアイルランド系の移民にとって唯一開かれた道は警察官や消防士など命をかけて挑まなければいけない仕事ばかりでした。現在でもニューヨークの警察官や消防士はアイルランド系の方が多いですよね。家代々の家業でされている方が多いみたいです。
そして一方ではビジネスや特殊能力で秀でたアイルランド系移民もいて、あのウォルト・ディズニーや作家のスコット・フィツジェラルド、ケネディ大統領は完全なるアイルランド系移民の子孫であり、オバマ大統領も母方がアイルランド系とのことです。
アメリカの発展にアイルランド系移民の力は欠かせなかったんですね。

博物館の窓からの風景
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このあたりは非常に古い建物ばかりで、100年以上前にここに住んでいた移民たちも同じ風景を観ていたのかなと思いました。
館内はまるでタイムカプセルのようです。古きニューヨークを体感したければ一度は足を運んでみるのも良いかもしれません。

そして博物館の1階は楽しいミュージアムショップで、ニューヨーク関連のグッツが所狭しと並べられています。
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ニューヨーク移民の歴史を知るためにはエリス島移民博物館と併せて訪問するのもオススメです。モダンでおしゃれなニューヨークの観光もいいですが、たまにはこういう古きニューヨークに思いを馳せる時間もいいなと思いました。

by kanagourmet | 2012-03-05 12:55